Story

あらすじと作者について


あらすじ

とあるノルウェーの街の出来事…。

温泉バブルで活気付こうとしている街で、医者を務めるストックマンはある真相を突き止める。温泉の吸水口の問題でバクテリアが繁殖、毒を撒き散らしているにすぎないという驚くべき事態であることを。それをみんなに知らせようと新聞に投稿して訴えようとするのだが、温泉を止めるのには莫大な費用がかかることに気づき、権益を守るためストックマンの兄の町長が動き出す。しびれを切らしたストックマンはすべてを直接民衆に伝えるため、ひとり演説台に立つのだが…。

公と私、正義と不正、さまざまな対立が自我の炎を掻き立てる歴史的傑作。

作者について

この作品の作者、ヘ ンリック・イプセン(Henrik Ibsen)は19世紀後半に活躍した劇作家で”近代劇の父”と称されるほどの巨匠。社会への鋭いまなざしとシンプルな構成力によって織り合わされた様々 な傑作がある。民衆の敵の他に、女性解放運動との関連で紹介されることの多い「人形の家」やグリーグの名旋律に彩られた幻想劇「ペール・ギュント」といった作品がある。本人はノルウェーを離れイタリアやドイツで執筆活動をしていたものの、劇の舞台は全てノルウェーであり国民的作家となっている。かつてはノルウェーの最高額紙幣の顔であった。

作品と私たち

今年の夏から選挙権の年齢引き下げという歴史的な選挙が行われます。そしてそれは私たち高校生に社会の本質を見抜ける力があるのか試している、とも受け取ることができ、その突きつけられた問いに対しどう思索を深めていくか…。そんな時に遭遇したのがイプセンの戯曲「民衆の敵」だったのです。
この戯曲は民主主義の負の部分に強烈な光を浴びせており、作品を学び、そして演じることでより深い社会への洞察力を身につけようとする狙いがありました。また、130年前の作品にしては驚くほど新鮮だったことにも衝撃を受けました。まさに現代にも生きていける真の古典なのでしょう。